山水画的枯山水
中庭は、蓬莱神仙(ほうらいしんせん)の世界を、山水画的枯山水で表現したものです。
枯山水とは、水を使わずに白砂や石、草木や苔などで山や水の景色を表現した日本庭園の様式で、無の境地を目指す禅宗の思想が影響を与えた閑静な庭園。
大広間からの景観は、正面に峻険(しゅんけん)な石組で、神秘的な蓬莱山をイメージしたもので、奥に方丈島(ほうじょうとう)、瀛州島(えいじゅうとう)の三神山から構成されています。
蓬莱神仙思想とは、古く紀元前の中国,燕(えん).斉(せい)地方で起こった土着信仰で.東方海上に蓬莱神仙世界があるとし.蓬莱(ほうらい),方丈(ほうじょう),瀛州(えいじゅう)の三島などが想定され、これらは神仙島ともいわれ.宝物や不老不死の仙薬が蔵されているとし、秦の始皇帝などは多くの方士に仙薬を求めさせました。一説にこの蓬莱神仙世界の東瀛すなわち瀛洲島は日本であるとも言われ、以後中国や日本においても.庭作りのテーマとして広く用いられています。
蓬莱山とは
蓬莱山は亀に似た生き物の上に乗っている山で、亀は蓬莱山を背中に乗せて海を周遊しているという伝説があります。現代、蓬莱山の正体は蜃気楼だったという説もあります。蜃気楼がゆらゆらと揺れる事で、洞窟が山の中にあるように見えたためです。日本庭園ではこれらをモチーフにした大きな石が配備される事が多く、そして、この蓬莱山は不老不死の象徴でもあります。
蓬莱山は、亀島のキーストーンとして左手に亀の頭を象徴する斜立石の亀頭石(きとうせき)を据え付け、大きな亀の背中に豪快な石組で神秘性をイメージしたものです。
更にその左手には蓬莱山から不老長寿の媚薬や金銀財宝を積み込み持ち帰る舟をイメージしている舟石。
蓬莱山にかけられた石橋は現世と蓬莱神仙世界をつなぐ橋をイメージしています。中央の石組から比較的低い視線から眺めることで蓬莱島の神秘性を表現しています。石橋を低く据えた様式は京都の大徳寺大仙院(だいとくじだいせんいん)などにその例があります。
通路からの景観
通路からの景観は、方丈島、瀛州島、蓬莱神仙の海に浮かぶ島々で表現されています。蹲踞風の石組は、台石で浮かせた前石、手燭石(てしょくいし)、湯桶石(ゆおけいし)・三尊石組(さんぞんいわぐみ)の鏡石(かがみいし)があり、すべて上部が平らな平天石となっています。
また、中庭の竹垣は、日本庭園文化の敷石などに用いられる縦横斜めとカギ型など真行草のデザインを創作したものです。
当庭石の石質は群馬県産の三波の青石で飛石は筑波石です。
蓬莱山に存在する松の種類は枝垂れ赤松で天目松(てんもくしょう)と言います。竹に巻き付ける方法や添え木で引く方法で若木から人工的にくねらせたものです。
当庭園は十川日本庭園研究室の十川洋明氏による設計、施工。
日本庭園を見ながらうな重はいかがでしょうか?